「老後が不安」「年金って将来貰えるのだろうか」
このような疑問を抱え続けている現役世代の方、多いと思います。
最初に結論から言えば、そこまで心配する必要はありません。
今回は、日本の年金について徹底解説していきます。
日本の年金
公的年金制度の内容
日本の公的年金制度は、
- 国民年金
- 厚生年金
に分かれます。
自営業者は国民年金のみ、会社員・公務員は国民年金と厚生年金の通称「2階建て」です。
全員に該当するわけではありませんが、遺族年金や障害年金も上記の年金制度に含まれています。
公的年金制度は、民間の個人年金保険と根本的に異なり、「世代間の支え合い」によって成り立つ制度です。
私達現役世代が支払う年金保険料は、年金を受け取っている人に支払われています。
これを賦課方式と呼びます。
賦課方式については不公平という意見も聞かれますが、一概にそうとは言い切れません。
50年前と2021年現在で物価が異なるように、2071年の物価が今のままとは限らないからです。
一般的には、少しでも経済成長していけば物価は上がっていきますので、今積み立てている1万円の価値は50年後は1万円より目減りします。
物価が上がることは「インフレ」と呼ばれ、賦課方式はインフレによる年金の目減りを補うために必要な制度です。
年金と所得代替率
上記の理由で賦課方式がとられる公的年金制度ですが、少子高齢化に伴い現役世代の負担が増える一方、現役世代が老後になった際に貰える次の現役世代の保険料は減ってしまうことが想定されています。
一時期、これを露骨に煽るマスコミがあり「老後2000万円問題」「年金制度崩壊」と言われました。本当に崩壊するかどうかは、所得代替率を見る必要があります。
所得代替率は、主に厚生年金に対して使われている指標です。
年金を受け取り始める65歳時の年金額が、現役世代の手取り収入額と比較してどのくらいの割合になるかを示すものです。
たとえば、所得代替率50%の場合、現役世代の手取り収入の半分を年金として受け取れることになります。
詳細は厚生労働省のホームページに記載されていますが、2014年の所得代替率は62.7%です。
これは夫婦(会社員+専業主婦/夫)で平均的な月給の場合です。
年金制度は初めから「何もしなくても国が年金あげますよ」という都合の良い制度ではありません。
現状でも1/3は自助努力で補うか、節約生活をする必要があるのです。
2050年には所得代替率が40~50%になると試算されています。
ただし、低所得者の場合は所得代替率も上がりますので、全員が50%になるわけではありません。
独身で低所得者(月収17万円前後)の場合は、所得代替率は70%前後になります。
高所得者が多額の保険料を支払っており、低所得者の生活を補填してくれているのです。
高所得世帯は苦労しますが、中~低所得世帯の場合は現状とさほど変わりないと思われます。
そもそも、今年金を受給している世帯ですら、現役並みの消費活動をすれば1/3が持ち出しです。
節約や貯蓄等がなければ到底賄えません。
その状況は今も未来も同じということです。
GPIFの真実
年金とセットで話題に上がるのがGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)です。
GPIFは、かなり誤解されています。
「年金の財源が無くなりそうだから投資で一発逆転の賭けに出ている」という考え方は、全くの誤りです。
詳細はGPIFのホームページに記載されていますが、簡単に解説します。
①あくまで積立金の運用でしかなく、年金財源に与える影響は1割しかない
少子高齢化が急速に進んだ影響で、現状は年金受給者>>現役世代の状態が続いています。
そのため、現役世代の保険料不足分を積立金の取り崩しによって補っています。
この積立金の部分を運用しているだけなので、財源に与える影響は軽微です。
また、現在は第一次ベビーブーム世代が年金受給者になって増えているだけなので、将来的には受給者も減っていきます。
要するに、あくまで「余裕資金の範囲」で運用しているということです。
②2001年から累計で95兆円の含み益が出ている
リーマンショックやコロナショック等、下落局面はありましたが、累計ではしっかり利益が出せています。
もし運用しなければ95兆円分の利益がなかったと考えれば、ゾッとします。
③「長期」「分散」という投資の王道を貫いて運用している
相場に上下はあれど、運用しているのは大事な年金です。
そのため長期投資、分散投資を徹底し、どんな未来が来ても慌てず構えられるような投資手法を貫いています。
一発逆転の賭けではなく、「世界経済は成長していく」という予測のもとに堅実に運用しているだけなのです。
年金はどうなるのか
ここまでで十分ご理解いただけたかと思います。
公的年金制度が破綻する可能性は、ほとんどないと言ってよいでしょう。
ただ、状況が改善するわけではありません。
平均的な月収のご夫婦で片方が専業主婦/夫の場合、現役時代の4~5割しか年金は出ない可能性が高いです。低所得層の独身でも、7割程度が限界でしょう。
現役世代の方、特に50代の方は年金生活時にどうするか試算しておいた方が良いです。
- 受給できる年金の額
- 毎月の支出額
- 年金では賄えない金額
年金で賄えない金額は、自分の貯金や金融資産から取り崩すしかありません。
資産が平均寿命までもたない方は、65歳以降も働く必要があります。
20代~40代の方も、他人事ではありません。
今のうちから家計簿をつけて支出を管理するとともに、「毎月いくらあれば自分らしく暮らせるか」を知っておくことは、将来不安を見える化することに役立ちます。
極論ですが、平均的な年収で手取り収入の半分程度で暮らせているなら、年金だけでほとんど賄える計算になります。
まとめ
今回は、誤解されがちな日本の年金について解説しました。
メディアは、時に自分たちが注目されたいがために誇張表現を用います。
実際の年金制度は、皆さんが想像するほど酷いものではありません。
過度に恐れて過剰に備えることで、今の楽しみを失っては意味がないです。
公的年金に関しては、文句を言っても天引きされるのみです。
現状を受け入れ、正しい知識を元にして将来に備えましょう!